地震・情報漏えい・システム障害——組織を取り巻く「もしも」にどう備えるか。リスクを洗い出し、優先順位をつけ、回避・低減・移転・保有の4戦略で対応する一連の流れを、身近な例とともに整理します。
先生ぇ、リスクって…悪いことが起きること、ですよねぇ?
多くの人がそう思うのよね。
でもリスクは本来、将来の「不確かさ」そのものを指すの。
マイナスだけじゃなく、プラスの機会も含むのよ。
え、いいことも入るの?
マジか。
リスク=ピンチだと思ってた。
補足すると、リスクマネジメントの国際規格(ISO 31000、国内ではJIS Q 31000)でもリスクは「目的に対する不確かさの影響」と定義されています。
影響はマイナスにもプラスにも振れる、というのがポイントですね。
たとえば新しい市場に進出するとき、失敗する不確かさもあれば、大成功する不確かさもあるでしょう?
どちらも『リスク』なの。
試験では損失側を中心に問われるけれど、定義は両面、と覚えておいてね。
なるほどぉ。
じゃあ、その不確かさにどう向き合えばいいんですかぁ?
流れがあるのよ。
リスク特定→リスク分析→リスク評価→リスク対応→リスク監視。
これを繰り返すの。
洗い出して、測って、順位つけて、手を打って、見張る…体育祭の準備みたいだね。
うまい例えですね。
しかも一度きりではなく、PDCAのように回し続けるのが大事です。
新しい脅威は次々出てくるので、監視して特定に戻る、というループになります。
特に分析と評価は混同しやすいから注意ね。
リスクアセスメントという言葉は、この特定から評価までの3つをまとめた呼び方よ。
分析と評価って、どう違うんですかぁ…?
なんだか同じに聞こえますぅ。
いい質問です。
分析は『どれくらい起こりそうで、どれくらい痛いか』を見積もる作業。
評価は『その結果、どれから手をつけるか』を決める作業です。
測るのが分析、順位づけが評価、と分けると覚えやすいですよ。
分析でよく使うのがリスクマトリックス。
たての軸に影響度、よこの軸に発生可能性をとって、右上(よく起きて被害大)ほど最優先、という見取り図ね。
おお、表にすると一目でヤバいやつがわかるじゃん。
便利だね。
そして本題のリスク対応。
代表的な4つの戦略があるの。
回避・低減・移転・保有。
まことさん、整理してもらえる?
はい。
リスク回避は危険な事業から撤退すること。
リスク低減はパスワード強化やバックアップなど。
リスク移転は保険加入やアウトソーシング。
リスク保有は影響が小さい場合に何もせず受け入れることです。
わぁ、4つもあるんですねぇ。
覚えられるか心配ですぅ…
ふふ、語呂で覚えましょう。
『回避・低減・移転・保有』で『か・て・い・ほ(家庭保)』。
家庭を保つ、と覚えると4つそろうわよ。
家庭保ね!
それなら忘れなさそう。
ところで移転って、具体的にどんなの?
火災リスクには火災保険、サイバー攻撃には情報セキュリティ保険。
リスクそのものは消えないけれど、損失をお金で肩代わりしてもらう発想ね。
システム運用を外部に委託するのも移転の一種よ。
注意したいのは、回避と低減の違いです。
回避は活動を『やめる』のでリスクがゼロになる。
低減は活動は『続ける』けれど被害を小さくする。
ゼロにするか、小さくするかが分かれ目ですね。
なるほど。
海で泳がない(回避)か、ライフジャケット着て泳ぐ(低減)か、って感じか。
まさにそれ。
めいさんの例え、わかりやすいわ。
分析のところで、もっと細かく調べる方法もあるんですかぁ?
あるわよ。
代表がFTAとFMEA。
この2つは分析の『向き』が逆なの。
向きが逆?
どゆこと?
FTAは『システムが止まった』という結果を頂点に置き、なぜ?
なぜ?
と原因を下へ枝分かれさせるトップダウン型です。
FMEAは逆に、個々の部品の故障から出発して、それが全体にどんな影響を与えるかを積み上げるボトムアップ型。
FTAは結果起点、FMEAは原因起点と覚えると整理できます。
頭文字の最後で覚えられそうですぅ。
FT『A』のAはアタマ(結果)から…えへへ、こじつけですけどぉ。
ふふ、覚えられれば何でもいいのよ。
最後にひとつ。
リスクが現実になってしまったときの備えも大事ね。
それがBCPですね。
地震やシステム障害が起きても事業を止めない、止まっても素早く立て直すための計画です。
備えあれば憂いなし、ってやつだね。
リスク、ちょっと好きになってきたかも。
いい姿勢ね。
今日のまとめは、リスクは『不確かさ』で両面ある、流れは特定→分析→評価→対応→監視、対応は『家庭保(回避・低減・移転・保有)』。
ここを押さえれば合格圏よ。
確認クイズ
リスク対応の4戦略に該当しないものはどれか。
- リスク回避
- リスク移転
- リスク拡大
- リスク保有
こたえを見る
正解: 3. リスク拡大
リスク対応の4戦略は回避・低減・移転・保有です。「リスク拡大」という戦略は存在しません。回避は原因活動をやめること、移転は保険などで他者へ移すこと、保有は受け入れること。低減を含めたこの4つが正規の戦略です。