会社どうしの取引にも、守らなければいけないルールがあります。特にIT業界の受発注で重要なのが「中小受託取引適正化法(取適法。旧:下請法)」と「独占禁止法」です。発注する側の力が強くなりがちな関係を公平に保つための法律として、しっかり整理しておきましょう。
取引の法律ってさ、あたしがコンビニで買い物するのとも関係あるの?
ふふ、いい疑問ね。
今日の主役は『会社どうしの取引』のほうなのよ。
例えばあなたがゲーム会社で、絵の制作を小さなスタジオに発注する、みたいな場面ね。
あー、お店で買うんじゃなくて、仕事をお願いする側とされる側ってことか。
そうです。
その『お願いする側』が大きくて強いと、立場の弱い相手に無茶を言いがちなんですよね。
それを防ぐのが中小受託取引適正化法(取適法)です。
なんだか難しい名前ですぅ…前は下請法って呼ばれてたって聞いたことがありますよぉ?
よく知っているわね。
正式には下請代金支払遅延等防止法という長い名前だったの。
2026年1月施行の改正で『中小受託取引適正化法(取適法)』に名前が変わったのよ。
試験では新旧どちらも問われる可能性があるから、両方覚えておくと安心ね。
発注する側を『親事業者』って呼ぶんですよねぇ。
これって大企業のことなんですかぁ?
規模そのものより『相手との大きさの差』で決まります。
たとえばプログラム作成の委託なら、資本金3億円超の会社が3億円以下の会社に出すと、出すほうが親事業者・受けるほうが下請事業者になります。
要は『大きいほうが小さいほうに発注する関係』が対象です。
なるほど、力の強いほうが親ね。
で、その親は具体的に何をやっちゃダメなの?
親事業者には4つの義務と11の禁止事項があります。
禁止の代表例は、受領拒否、代金の支払遅延、不当な減額、買いたたき(相場よりずっと安く買い叩くこと)、不当な返品などですね。
『あとで値切る』『理由なく返品』とか、やられたらキツいやつばっかじゃん…
そうなのよ。
だから法律でしっかり守っているの。
覚え方は『親には《義務4つ・禁止11こ》』とセットで。
数字で押さえると引っかけ問題に強くなるわ。
ところで先生、お話に出てきた『独占禁止法』とは何が違うんですかぁ?
いい流れね。
取適法が『縦の関係(発注者と下請け)』を守る法律なら、独占禁止法は『横の関係(ライバル会社どうしの競争)』を守る法律。
運用しているのは公正取引委員会という役所よ。
競争を守る…?
ライバルどうしなんだから、放っておいても勝手に競争するんじゃないの?
それが、こっそり手を組まれると競争が止まるんです。
代表がカルテル。
本来ならお互い値下げ競争するはずなのに、『みんなで値段を高いまま揃えよう』と裏で約束してしまう。
消費者が損をするので禁止です。
うわ、ズルじゃん!
それマジか…客が高い値段を押し付けられるってことだよね。
そういうこと。
似た仲間に入札談合があるわ。
本来は一番安く請け負える会社が落札するはずの入札で、『次はあの会社の番』と裏で順番を決めてしまうの。
もう一つ、再販売価格の拘束も禁止です。
メーカーが『この値段より安く売るな』と小売店に強制すると、お店どうしの値下げ競争がなくなってしまうからです。
じゃあ反対に、お店が自分でセールして安く売るのは大丈夫なんですよねぇ?
もちろん大丈夫よ。
値引きセールはむしろ健全な競争そのもの。
独占禁止法が嫌うのは『競争をなくす行為』だから、ここを取り違えないでね。
関連して、消費者を守る法律も一緒に押さえておくと得点源です。
特定商取引法や消費者契約法ですね。
これらは『縦・横』ではなく『事業者と消費者』を守る法律です。
IT系だと、ソフトの開発を頼むときの契約も気をつけないとダメだよね?
鋭いわね。
開発を外部に委託するときは、請負契約か準委任契約かで責任の重さが変わるの。
対比で覚えると簡単です。
請負は『動くシステムを必ず完成させて納める』約束、準委任は『専門家として誠実に作業する』約束。
完成責任があるのが請負、ないのが準委任、という違いですね。
ふふ、よくまとまったわね。
最後に整理しましょう。
取適法は『発注者→下請け』の縦を守る、独占禁止法は『ライバルどうし』の横を守る、消費者契約法などは『事業者→消費者』を守る。
誰と誰の関係を守る法律かを意識すれば、もう迷わないわよ。
確認クイズ
独占禁止法で禁止されている行為として、不適切なものはどれか。
- カルテル
- 入札談合
- 再販売価格の拘束
- 自社商品の値引きセール
こたえを見る
正解: 4. 自社商品の値引きセール
自社商品の値引きセールは独占禁止法違反ではありません。むしろ価格による健全な競争を促す行為です。カルテル(同業者間での価格の申し合わせ)・入札談合(落札者の事前取り決め)・再販売価格の拘束(小売価格の強制)は、いずれも競争を阻害するため独占禁止法で禁止されています。